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犬の豚肉アレルギーとは?症状と安全なドッグフードの選び方を徹底解説

犬がアレルギーを引き起こす要因は、人間と同じくさまざまです。市販のドッグフードやおやつに含まれていることのある「豚肉」も、アレルギーの原因(アレルゲン)となる可能性があります。今回は愛犬が豚肉アレルギーでも、安心して食べられるフードの選び方を分かりやすくまとめました。

もくじ

犬の豚肉アレルギーとは?

犬の豚肉アレルギーとは、犬が豚肉を食べることによって、アレルギー症状を引き起こす状態を指します。これは犬の免疫システムが、豚肉の成分を誤って脅威とみなすことで発生します。一般的な豚肉アレルギーの症状には、

  • かゆみと、それに伴う過度に体を舐めたり噛みついたりする行動
  • 耳や皮膚の炎症、蕁麻疹
  • 下痢などの消化器症状

などが挙げられます。

愛犬が豚肉アレルギーを発症した場合には、アレルゲンである豚肉を避けた食事を摂る必要があります。そこで今回は、愛犬が豚肉アレルギーを発症しても安心して食べられる、フードの選び方や作り方をまとめました。

犬に豚肉を与えても大丈夫?豚肉が犬の体に与える影響

結論から言うと、豚肉は「きちんと処理されたものであれば」多くの犬が食べても問題のない食品です。ここでは、豚肉が犬の体に与える可能性がある影響について解説します。

愛犬に安全に豚肉を与える条件

アメリカ最古の愛犬家団体として知られる「アメリカンケネルクラブ」は、愛犬に安全に豚肉を与える条件を、以下のように提示しています。

  • 寄生虫の発生を防ぐため、きちんと加熱処理されていること(=生肉でないこと)
  • 濃い味付け(特にオニオンパウダー、ガーリックパウダー、ナツメグによるもの)がなされていないこと
  • ハムやベーコンといった加工食品でないこと
  • けがの原因となる骨が含まれていないこと
  • 特に胃腸に不安がある犬の場合、豚肉を与えすぎないこと

つまり味付けや加工のされていない、きちんと加熱され、骨が取り除かれた豚肉であれば、適切な量の範囲で愛犬に与えられます

はじめて愛犬に豚肉を与える際の注意点

アメリカンケネルクラブは、はじめて愛犬に豚肉を与える場合、「少量のみを与えて反応を伺う」ことを推奨しています。これは、愛犬に豚肉アレルギーを持っていないかどうかを確かめるためです。豚肉を摂取し、「6時間~24時間後」にかゆみなどの症状が出た場合には、その犬は豚肉へのアレルギーを持っている可能性があります。アレルギーの程度や症状によっては例外もあるものの、食事後すぐにアレルギー反応が出ないことも多いため、はじめての食材を与える場合にはご注意ください。

またアレルギーではなくても、特定の食べ物を上手く消化できない「食物不耐症」を持った犬も多く存在します。豚肉に対して食物不耐症を発症した場合、嘔吐や下痢といった症状が出る場合があります。

犬が1日当たりに摂取できる豚肉の量

犬に与えられる豚肉の量は、犬の健康状態や年齢、体格や、豚肉の部位によって変わるため、一概には言えません。参考として全米アカデミーズは、「体重およそ15kgの妊娠・授乳中でない成犬」の場合、1日当たりに摂取できる脂質の推奨量を「14g」としています。そして文部科学省の情報をもとに計算すると、「脂身つきの豚ロース肉」は72g程度で脂質14gを含有することになります。豚肉以外の食品からも脂質を摂取することを考えると、1日当たりの推奨量はより少なくなるでしょう。

豚肉の推奨摂取量が少ないのは、その他の肉に比べると脂肪が多い傾向にあるためです。特に胃腸が弱った犬やシニア犬、仔犬に豚肉を与えすぎると、消化不良の原因となる場合があります。一方でアレルギーを持たない健康な犬であれば、適切な量の豚肉を食べることで、ビタミンB1などの栄養を摂取できます。この場合は可能な限り、脂身の少ない部位を選んであげるとよいでしょう。

ドッグフードに豚肉が使われる・使われないのはなぜ?

豚肉は、多くの犬にとって有力な栄養源であるにもかかわらず、ドッグフードの材料としてあまり普及していません。ここでは「豚肉入りのドッグフードが、材料に豚肉を用いる理由」と、「豚肉入りドッグフードが普及していない理由」について解説します。

豚肉入りドッグフードのメリット

豚肉がドッグフードの材料として使われる理由には、

  • ビタミンB1をはじめとする、豊富な栄養を有しているため
  • 他の肉類に比べると、アレルギーを引き起こす可能性が低いため

などが挙げられます。

ドイツのドッグフードブランド「BUBECK」は、豚肉を取り入れたドッグフードの栄養面のメリットとして、

  • 果糖から効率よくエネルギーを摂取できること
  • 皮膚、筋肉、神経などの再生に重要な栄養素を摂取できること
  • 鉄分の摂取や吸収に役立つこと

を挙げています。 このように豚肉は、多くの犬が効率よく栄養を摂取するための、優秀な食材の1つと言えます。

豚肉入りドッグフードが一般的でない理由

豊富な栄養にもかかわらず、豚肉がメインで使用されたドッグフードは、牛肉や鶏肉に比べると多くありません

その理由としては以下が挙げられます。

  • 他の肉類に比べ、脂肪が多いこと(=犬の健康状態や豚肉の量によって、消化不良を起こしやすいこと)
  • 過熱が十分でないと、感染症を引き起こす可能性があること
  • 海外から安価で質の悪いものを取り寄せると、寄生虫などが付随している場合があること

豚肉入りドッグフードの見分け方とは

ドッグフードの原料に豚肉が使われている場合、成分表示欄では

  • 豚肉
  • 肉類(豚)
  • (有機)ポーク

などの表記を見ることができます。これらはドッグフードの「主な材料」として、豚肉が用いられている場合の表記です。栄養や愛犬の嗜好を理由に豚肉を使ったドッグフードをお探しなら、豚肉が使われていると明確に分かるドッグフードを選ぶと良いでしょう。

一方、愛犬が豚肉アレルギー(またはその疑い)を持っており、豚肉の摂取を避けたい場合には、

  • ポークエキス
  • 豚肉粉(ポークミール)

などの表記にも注意する必要があります。これは主な材料がその他の肉類であっても、アレルギーを持った犬にとってはポークエキスなど原因でアレルギー症状を引き起こす可能性があるためです。

豚肉アレルギーの愛犬のためのドッグフードの選び方

愛犬が豚肉アレルギーを発症した場合(またはその疑いがある場合)、日々の食事にはアレルゲンを含まないフードを与える必要があります。ここからは、豚肉アレルギーを持った愛犬に適したフードの選び方について解説します。

最も確実なのは動物病院で指示を受けること

イギリスにある世界最古の愛犬家団体「ザ・ケネルクラブ」は、食物アレルギーを持つ愛犬に与えるフードについて、まずは「獣医と話し合うべき」としています。ドッグフードには複数のタンパク質源が用いられていることが多いです。そのため動物病院での診察の結果、すぐにアレルゲンを特定できないことは珍しくありません。

獣医の紹介を受け、アレルゲンと疑われるものが混入しないよう配慮された「食物アレルギー対応療法食(除去食とも)を購入するのが、最も安心で確実な方法です。

自分でフードを選ぶ場合もアレルギー対応療法食の選択を

仮に入手性や価格、あるいは愛犬の好みの問題で獣医が勧めるフードを使用できない場合であっても、推奨されるのは「食物アレルギー対応療法食(除去食)」です。一般的に流通しているフードは、原材料名に「豚肉」や「ポークエキス」などが含まれていない場合でも、製造過程でアレルゲンが混入する可能性があります。療法食は、スーパーなどに売られているドッグフードに比べると高価なことが多いです。それでも愛犬の安全を最優先とするのなら、やはり製造過程にまで配慮されたフードを選びたいところです。

皮膚に炎症があるなら「オメガ3脂肪酸」を含むフードがおすすめ

愛犬に「しきりに身体を舐める・噛む」といった症状が出ている場合、アレルギーにより皮膚に炎症が起きている可能性が高いです。この場合に推奨されるのが、「オメガ3脂肪酸」が豊富に含まれたドッグフードです。

犬の場合、オメガ3脂肪酸を摂取することで以下の効果が得られます。

  • 子犬の視力や脳の発達
  • 皮膚や関節の炎症抑制
  • 脳の健康維持
  • 心臓・血管・血液の健康維持
  • 生理機能の調整(新陳代謝・コレステロールのバランス維持)

「オメガ3脂肪酸」はマグロなどに多く含まれる栄養素で、魚を主原料としたフードに含有されています。また近頃は、オメガ3脂肪酸を効率よく摂取できるサプリメントも販売されています。

下痢の症状があるなら「プロバイオティクス」入りフードの選択も

食物アレルギーにより、下痢などの消化器官系の症状が出ている場合には、「プロバイオティクス」が含まれるフードの選択が有効です。プロバイオティクスとは、人や動物の健康に有益な微生物を指します。特に有名なものが、ヨーグルトなどに多く含まれる「乳酸菌」です。プロバイオティクスが豊富に含まれたドッグフードは高価な傾向にあるものの、下痢など症状を改善するためには有効な方法と言えます。

低アレルゲンのドッグフードは継続して使用しやすい

低アレルゲン、つまりアレルギーを起こしにくいドッグフードは、豚肉以外のアレルギーの併発を避ける上で有効です。その他、鹿肉やラム肉、馬肉なども低アレルゲンフードの原材料として、よく用いられています

「豚肉以外にもアレルギーがあるかもしれない」「豚肉を除去しても症状が治まらない」という場合には、低アレルゲンフードを与えて様子を見てみましょう。それでも症状が治まらない場合は、ノミアレルギーや皮膚疾患など、「食物アレルギー以外の原因」が隠れている可能性もあります。

食物アレルギー対応療法食を購入できる場所

食物アレルギーに対応した療法食は、一般のスーパーなどでは取り扱われていないことが多いです。低アレルゲンの療法食は、一部の動物病院やペットショップなどで購入できます。ただし入手性や選択肢の数を考えると、インターネットショッピングを使用するのが最も簡単でしょう。療法食を購入する際には、事前に獣医のアドバイスを受けておくことをおすすめします。

アレルギー症状のある愛犬へのその他のケアについて

皮膚の炎症や消化器症状(主に下痢)といったアレルギー症状が出ている場合、「食べ物」以外の方面でもケアが必要です。ここではアレルギー症状が出ている間、愛犬のためにできることについて解説します。

シャンプーが必要なら低刺激のものを使う

犬の食物アレルギーにおける、代表的な症状が「皮膚の炎症と、それに伴うかゆみ」です。そのためシャンプーが必要な場合には、「低刺激」と書かれたものを選択するのが無難です。その他、保湿成分が配合されたシャンプーも有効でしょう。

ただしアレルギー症状が見受けられる場合には、事前に獣医に、シャンプーについて相談しておくことをおすすめします。症状によってはシャンプーを禁止されたり、保湿剤の仕様などを勧められたりする可能性があります。

耳掃除は獣医の判断に従う

愛犬が耳をかゆがっている場合、自己判断で耳掃除を行うことはおすすめできません。これは誤った方法や頻度で耳掃除を行った場合、アレルギーによる外耳炎(耳の炎症)を悪化させたり、痛みを感じさせる可能性があるためです。耳掃除の方法や頻度については事前に獣医に相談し、その指示に従うと良いでしょう。耳掃除が必要な頻度は犬種によって異なるものの、定期的に動物病院を訪れ、そこで耳掃除を済ませてもらうのも一考です。

フードを変えた後はうんちの状態確認を

アレルギーを起こした犬は、下痢などの消化器症状を起こしやすいです。

「フードを変えたのにアレルギー症状が出ている」場合、うんちの状態を確認することは、アレルゲンを特定するためにも重要です。「豚肉が除去されたフードを与えたのに、消化器症状が治まらない・悪化した」という場合には、豚肉以外にもアレルギーを持っていたり、そもそも体調不良の原因が食物アレルギーでない可能性があります。この場合は、獣医への再度の相談が推奨されます。

また、アレルギーでなくても「体質に合わないフード」は存在します。慣れれば症状が改善する場合もありますが、下痢による脱水症状のリスクなどを考えると、できるだけ早くフードを切り替えたいところです。

アレルゲンが確定するまで、駆虫薬や抗生物質は可能な限り避けること

医師や獣医、専門ジャーナルで構成されたドイツの「犬のアレルギーと食物不耐症」専門ポータル「Mein Allergie Portal」は、アレルゲンが確定するまで「駆虫薬」や「抗生物質」を与えることを可能な限り避けるべきとしています。これは食事に対してアレルギー症状が出たのか、薬に対してアレルギー症状が出たのかが判別できなくなるためです。

ただし愛犬の状況によっては、どうしても薬の投与が必要な場合もあります。この場合は自己判断ではなく、必ず獣医の指示に従って必要な対応を取りましょう。

愛犬に手作りの食物アレルギー療法食を与える場合のポイント

愛犬が食物アレルギーを持っている場合、もちろん手作りの療法食(除去食)を与えることも選択肢の一つです。豚肉アレルギーの場合は豚肉を避け、その他の肉類や魚などを使い、タンパク質を補給できる食事を作ると良いでしょう。特に馬肉やラム肉、魚類は低アレルゲンのドッグフードにも採用されることが多く、入手性も比較的高いです。

療法食を手作りする場合の注意点は、ブイヨンなどの既製品に豚肉が含まれてる可能性があることです。その他、食品に含まれる添加物もアレルゲンとなりうるため、可能な限り避けるべきとされています。

愛犬が豚肉アレルギーかも、と思ったら

世界最古の愛犬家団体「The Kennel Club」は、愛犬の食物アレルギーが疑われる場合、日々の食事を変える前に獣医に相談することを推奨しています。これはアレルギーと見られる症状が出ている段階で診察を受けることで、「除去食試験」を有効に進めやすくなるためです。「除去食試験」とは、これまで食べていた「アレルゲンと推測される材料」を除去した食べ物を与えることで、その経過を見る試験・治療方法です。

血液検査でアレルゲンを特定できなかった場合でも、除去食試験を通してアレルゲンを特定できることは多いです。アレルギーかも、と思ったら、その後の経過を見るためにも、愛犬をできる限り早く動物病院へ連れて行きましょう。このときには、いつも食べているフードの原材料を確認できるものを持っていくことをおすすめします。

その他、動物病院での検査により「アレルギーはあったが、アレルゲンが豚肉ではなかった」「アレルギーではない、別の病気が見つかった」といった結果を得られる可能性もあります。

犬の豚肉アレルギーに関するよくある質問と回答

ここからは犬の豚肉アレルギーに関連する、よくある質問にお答えします。

犬の食物アレルギーはどうして起こるの?

犬に限らず、食物アレルギーは「体内の免疫システムが、特定の食品や成分を誤って脅威と見なした」場合に発生します。このときに起こる免疫反応が、皮膚の炎症や消化器症状などに繋がります。豚肉を摂取した際に過剰な免疫反応が起こる状態のことを、「豚肉アレルギー」と呼びます。すべての食品が犬の食物アレルギーの原因になり得ますが、多くの場合でアレルゲンとなるのは、豚肉を含む肉類や、乳製品といったタンパク質源です。

今まで食べていたものがアレルゲンになることはある?

はい、犬の食物アレルギーは後天的に発症する場合があります。そのため、これまで問題なく食べていたものがアレルギー症状の原因となることも、十分に考えられます。

アレルゲン対策フードを食べてくれないときにはどうすればいい?

愛犬がアレルゲン対策のフードを好んで食べないという場合には、

  • アレルゲンが含まれないトッピングを追加する
  • 手作り食と組み合わせるなどして、少しずつ慣れさせる
  • ドッグフードのタイプを変える(主な原材料、ドライかウェットかなど)
  • 運動量を増やし、おなかを空かせる

といった対応が考えられます。その他、犬によっては「フードを温める」「フードをふやかす」といった方法が有効なこともあります。愛犬が偏食家の傾向にあるのなら、少量のお試しパックを利用できる療法食を選ぶのも良いでしょう。

炎症などのアレルギー症状はどれくらいの期間で改善する?

適切にアレルゲンを除去できたなら、早い場合3~4週間ほどで、炎症などの症状が改善されます。ただしアレルギーにより生じた耳の炎症が悪化し、感染症(中耳炎)を患ってしまった場合、完治までには3ヶ月以上を要する場合があります。またアレルゲンをなかなか特定できない場合には、症状が改善されるまでに時間が掛かりやすくなります。

食事療法を行っても症状が改善しない場合にはどうすればいい?

複数のアレルゲンや、その他の病気を抱えている可能性があります。動物病院の指示に従い食事療法を行っても症状が改善しない場合には、今一度獣医にご相談ください。

まとめ

愛犬が豚肉アレルギーを発症した場合でも、アレルゲンの含まれない療法食を適切に選択することで、症状の改善に期待できます。「アレルギーかも」と思ったら、まずは愛犬を動物病院に連れて行き、診察を受けましょう。

このとき今後の食事療法の他、シャンプーや耳掃除の方法、塗り薬などを使う必要があるかといった詳細についても、アドバイスを受けられるはずです。

  • この記事を書いた人

ささみ

ペット栄養管理士、ドッグトレーナーの資格を持ち、人生の大半を犬にまつわる仕事に携わってきました。現在は、これまでに得た知識や経験を活かし、会員数2000人のオンラインサロンのオーナーを務めています。 他のサイトでは掲載されていない独自の切り口で情報発信しつつ、ミニマリストに暮らしています。