獣医師の診断と指導に基づいて、愛犬に与える必要がある腎臓病用の療法食。腎臓機能の負担になるタンパク質、リン、ナトリウムを制限・調整しているのが特徴です。専門家ではないから何を基準に療法食を選んだらいいのかわからない、と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、腎臓病用フードのおすすめを3つに絞って、比較しながら詳しく解説します。また、フードを食べないときの対処法、飼い主さんのよくあるお悩みについても丁寧に解説。ぜひ愛犬のQOLが上がる腎臓病用フード選びの参考にしてくださいね。
もくじ
犬の腎臓病とは
腎臓の役割は大きく分けて5つあります。どれも犬の体にとって重要な役割なのですが、何らかの理由でその役割が果たせなくなった状態が腎臓病です。
- 血液をろ過して、血液の中の老廃物を尿として体の外へ排出
- 赤血球を作るために必要なホルモン、エリスロポエチンの分泌
- 水分と電解質の調整
- 血中のpH調整
- 血圧の調整
犬の腎臓病は、急性腎臓病と慢性腎臓病に分けられます。急性腎臓病とは、腎臓に対して毒性があるものを摂取することで、急激に腎臓の機能が低下してしまう病気です。救急治療で回復することも多くあります。慢性腎臓病とは腎機能が低下している状態が長く続く状態。完治することはないため対症療法で病気の進行を遅らせます。次のような症状が気になり始めたら、早めに動物病院で受診しましょう。
- 水をたくさん飲む
- 薄い色、臭いの少ない尿をたくさんする
- 食欲があまりない
- 体重が減ってきた
- 便秘気味になった
- 嘔吐する
- 毛並みが悪くなった、艶がなくなった
- 口臭が気になる
慢性腎臓病は早期に治療や適切なケアを始めることで、愛犬のQOL(生活の質)を長く維持することができます。腎臓病の治療はフードの切り替えが一般的。特に、腎臓への負担となるタンパク質・リン・ナトリウムを制限する食事療法がとても大切です。今回ご紹介するような、腎臓に負担をかける成分は抑えつつ、必要な栄養はしっかりと摂れるフードに変えることをおすすめします。
腎臓病の犬にとって良いフードとは
愛犬と長いお付き合いとなる腎臓病用フード。病気の進行を遅らせてQOLを高く維持した状態で、1日でも長く元気でいて欲しいですよね。たくさんある腎臓病用フードの中でも、どれが良いのかわからず迷ってはいませんか?フード選びのときにチェックしたい成分を詳しくご紹介します。
タンパク質・リン・ナトリウムの量が制限されている
腎臓病の進行を遅らせるために重要なのは、腎臓の負担となるタンパク質・リン・ナトリウムの量を制限することです。普通のフードに入っている量では、腎臓病の犬には多すぎて病気が進行してしまいます。腎臓病用フードはタンパク質・リン・ナトリウムの量を腎臓への負担が最小限になるよう抑えてあるため、食事量を減らさずに腎臓機能の低下を遅らせることができます。
腎臓病用フードとして適切なタンパク質の量は、ドライフードで粗タンパク質14%〜20%です。腎臓でタンパク質は代謝されますが、慢性腎臓病になると代謝も負担となってしまいまうため、タンパク質を制限した食事が大切です。でも、タンパク質を減らしすぎると筋力が落ちて立てなくなってしまったり、元気がなくなってしまうことも。量を制限しつつ、良質なタンパク質を摂ることが重要になってきます。
腎臓病用のドライフードで適切なリンの量は0.2%〜0.5%です。リンは体内で増えすぎてしまったときには腎臓から排出されますが、腎機能が低下してしまうと血液に蓄積されます。血液の中で増えたリンによって血管や骨などがダメージを受けるために、リンの制限が必要です。海外の研究結果では、リンを制限した犬の生存期間が長くなったという結果も報告されています。
腎臓病用ドライフードで適切なナトリウムの量は0.3%以下。ナトリウム、すなわち塩の摂りすぎは高血圧の原因となります。慢性腎臓病で腎機能が低下している状態では、ナトリウムをうまく排泄できないためです。健康な犬はナトリウムを尿へ排泄することが出来るので高血圧にはなりにくいですが、腎臓病の犬はナトリウムの排泄が難しくなるので、注意する必要があります。
抗酸化物質が豊富に入っている
犬の腎臓病は、酸化ストレスが病気の進行に関係しているといわれています。酸化ストレスとは、犬の体の中でたくさん作り出された活性酸素と、活性酸素を退治する抗酸化能力とのバランスが崩れた状態のことです。酸化ストレスを軽減させるために抗酸化物質が入っているフードを選びましょう。
DHA・EPA・ルテインなど、いくつかの抗酸化物質が犬の腎臓病に有効といわれていますが、その中でも特にビタミンCとビタミンEは積極的に取り入れたいところ。ビタミンEは活性酸素から腎臓を守ってくれますが、守るために頑張りすぎると抗酸化能力がなくなってしまいます。でも、ビタミンCがビタミンEの抗酸化能力を元に戻してくれるのです。
腎臓病用ドライフードで適切なビタミンCの量は100IU以上、ビタミンEの量は400IU以上が推奨されています。残念ながらドッグフードの成分表にはビタミン類としてまとめられていることが多く、細かい含有量まで表記されていないことが多いです。
アンモニアなどの老廃物を排出するための食物繊維が入っている
食物繊維というと、お通じが良くなるというイメージがありますが、腸内のアンモニアや余分なナトリウムに絡んで排泄する効果があります。食物繊維の働きで血液中に溜まってしまった老廃物が排泄されることにより、腎臓の負担を軽くする大切な栄養素です。
オメガ3脂肪酸が入っている
亜麻仁油、サーモンオイルなどに含まれるオメガ3脂肪酸は抗炎症作用があるため、腎臓病の進行を遅らせる効果があるという報告があります。対してオメガ6脂肪酸はコレステロール値を下げる働きがある一方、炎症を広げる作用も。オメガ6脂肪酸が悪者というわけではなく、抗炎症作用のあるオメガ3脂肪酸との摂取比率が大切です。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取比率は1:2〜1:4が理想とされています。炎症を広げてしまうオメガ6脂肪酸の方が多いことに不安になってしまう方もいるかもしれません。色々な食品に含まれているので、人であれば1:50の比率でオメガ6脂肪酸を多く摂取しています。2倍〜4倍はさほど多い数字ではないことがわかると思います。このことからも、積極的にオメガ3脂肪酸を摂った方が良いというのはうなずけますね。
腎臓病の犬におすすめなドライフード3選
ここまで、腎臓病の愛犬にはどんな成分や特徴のフードが良いのかについて詳しくお伝えしてきました。ここからは、その成分や特徴をしっかり網羅したおすすめの腎臓病用フードを3つに絞ってご紹介します。
和漢・未来のドッグフード 特別療法食J(腎臓用)
「和漢・未来のドッグフード」は和漢とマクロビを中心に、鹿や魚、オメガ3脂肪酸などをふんだんに使った、犬の健康を守るための和漢ドッグフードです。低タンパク質・低リン・低ナトリウムを実現している一方で、エネルギー源として野生の鹿肉を採用しています。ヒューマングレードで添加物無添加も安心ポイント。自然の力で徹底的に腎臓病の犬の健康寿命にこだわった療法食です。
口コミはおおむね良い評価でした。血液検査の数値が良くなったという口コミが多いです。また、元気を取り戻した、若返ってきたという声も一定数あり、満足度の高さがうかがえました。
良い口コミとは反対に、食いつきが悪いという口コミもありました。これは好みの問題もあるので仕方のないことかもしれません。また、値段が高いという口コミも見受けられました。良い素材を使っているのはわかるけど値段が高いとのコメントから、品質には満足だけど値段が…と躊躇してしまう心情がうかがえます。
和漢・未来のドッグフード 特別療法食J(腎臓用)の内容量は1kg。定期購入やまとめての購入で、通常価格よりもかなりお得になります。定期購入にするだけで1,000円安く買うことが出来るのは嬉しいポイント。毎日食べるものなので、まとめての定期購入が断然お得ですね。
- 通常購入(1袋):5,720円(税込)
- 定期購入(1袋):4,620円(税込)
- 定期購入(2袋):税込7,700円 ※単価3,500円+税
定期購入で1000円引き!
yum yum yum! 健康マネジメント腎臓
「yum yum yum! 健康マネジメント腎臓」はおいしさにこだわった腎臓病療法食です。かつお節・しいたけ・こんぶの旨み成分がたっぷり入っていて香りも良いのが特徴。もちろんヒューマングレードで添加物無添加です。おいしさにこだわりながら獣医師監修で原材料と栄養価も妥協せず、最高のフードを一切の妥協なく作ろうという決意のもとに作られたフードです。
こちらも口コミは良い評価が多かったです。食いつきが良いという口コミが多数。今までドライフードは一切食べなかったのに、yum yum yum! 健康マネジメント腎臓は美味しそうに食べているというクチコミもあり、おいしさへのこだわりが犬にも届いているようです。
悪い口コミもいくつかありました。うんちが柔らかくなってしまったという声も。体質的に合わない子がいるのは仕方ないことですね。そして、値段が高いという口コミもいくつか見かけました。こだわって良いものを作ると、どうしても値段も上がってしまいますね。
yum yum yum! 健康マネジメント腎臓の内容量は1.3kg。もっと手軽にお試しできる小さいパックもあるので、まずは試してみるのも良いでしょう。1.3kgのみ定期購入できます。買い忘れの心配がないので便利なサービスですね。
- ちょこっとパック50g:290円(税込)
- 500g:2,440円(税込)
- 1.3kg:5,300円(税込)
食いつきバツグン!
ロイヤルカナン 腎臓サポート
「ロイヤルカナン 腎臓サポート」はリンを制限しているものの、高消化性タンパク質を配合。高消化性タンパク質は体内で90%以上消化されるタンパク質のことです。また、腎臓病になると食欲低下がみられることがありますが、少ない食事量でも必要な栄養が取り込めるようエネルギー含有量が調整されています。
良い口コミが多く見受けられます。愛犬が好きな匂いでバクバク食べている、食べムラがあってもカナンの療法食は長く食べてくれた、など食いつきが良いと評価している方が多かったです。また、目やにがなくなったという口コミもありました。
悪いクチコミは主にシニア犬の飼い主さんから。シニア犬には少し硬い、粒が大きくて食べづらそう、歯が悪いから噛まずに飲み込んでいる、などフードの硬さや大きさがシニア犬には少し不向きという評価が多かった印象。ふやかしたり砕いたりして食べやすくする工夫が必要ですね。
ロイヤルカナン 腎臓サポートは動物病院かロイヤルカナン公式サイトからの購入のみ。1kgと3kgから選べます。動物病院で獣医さんの処方で購入することが多いのではないでしょうか。病院でも扱われている高品質でロングセラーの療法食です。
- 1kg:2,431円(税込)
- 3kg:6,408円(税込)
病院でも取り扱われています!
3つの商品の特徴を比較
3つの商品を紹介してきましたが、ここでそれぞれの特徴をまとめますので、フードを選ぶ際の参考にしてくださいね。
(特徴)
- 和漢・未来のドッグフード:和漢とマクロビを中心とした自然派療法食
- yum yum yum! 健康マネジメント腎臓:獣医師監修、おいしさにこだわり
- ロイヤルカナン 腎臓サポート:高消化性タンパク質を配合
(添加物)
- 和漢・未来のドッグフード:不使用
- yum yum yum! 健康マネジメント腎臓:不使用
- ロイヤルカナン 腎臓サポート:不使用
(ヒューマングレード)
- 和漢・未来のドッグフード:ヒューマングレード
- yum yum yum! 健康マネジメント腎臓:ヒューマングレード
- ロイヤルカナン 腎臓サポート:記載なし
(内容量・価格)
- 和漢・未来のドッグフード:1kg / 5,200円(定期購入で4,200円)
- yum yum yum! 健康マネジメント腎臓:1.3kg / 5,300円
- ロイヤルカナン 腎臓サポート:1kg /2,431円, 3kg / 6,408円(税込)
腎臓病用フードを食べないときの対処法
今までのフードはちゃんと食べていたのに、腎臓病用フードに変えたら食いつきが悪くなることがあります。理由はいくつか考えられますが、主な理由は次のようなものです。
- 普通のフードよりも味が薄いので、あまりおいしいと感じられない
- 急にフードが変わって戸惑っている、警戒している
- 腎臓病が原因で食欲が落ちている
食いつきが悪いからと、愛犬の好きなものを気軽にトッピングしてしまったら、どんどん腎臓病が悪化してしまいます。腎臓に負担を掛けないように、色々と工夫してみましょう。これからご紹介する方法もぜひ試してみてください。
フードをお湯でふやかす
腎臓病用フードは成分を制限していることにより味が薄く、匂いも弱くなっているため、愛犬があまり好んで食べないことも。フードをお湯でふやかすことで温まって香りが立つので、食いつきが良くなることがあります。食欲低下で硬いフードを噛むのが辛いために食べなくなっている可能性も考えられるので、その場合にはふやけて柔らかくなると食べやすくなるでしょう。
お湯でふやかすときの注意点は、熱湯ではなくぬるま湯を使うことです。熱湯を使うと栄養素が壊れてしまいます。また、表面は冷めていても中はまだ熱く愛犬がやけどをしてしまう可能性もあるので、必ず人肌程度のぬるま湯を使いましょう。
トッピングで匂いを変えてみる
フードだけではなかなか食べてくれない場合には、トッピングをするのも効果的です。注意すべき点としては、リンを多く含んでいるチーズや肉・魚は避けること。茹でこぼしをした野菜や腎臓病用の市販のトッピングをかけてあげましょう。フードとよく混ぜることで、トッピングの匂いがフードに移って食欲を刺激します。
ドライフードからウェットフードに変えてみる
ドライフードからウェットフードに変えるメリットは水分を多く含んでいること、匂いが強いため嗜好性が高いことです。
腎臓病はたくさん尿が出るので、水を飲んだり食べ物から水分をとらないと、脱水症状を起こしてしまいます。ドライフードに比べてウェットフードは水分が多いため、水分補給がしやすいのが特徴です。また、ウェットフードは匂いが強いため「ドライフードは食べないけどウェットフードなら食べる」ということも期待できます。
腎臓病用のウェットフードは缶詰やパウチなど多数ありますので、愛犬がどれを好んで食べてくれるか色々試してみるのもいいですね。
数種類のフードをローテーションする
ずっと同じフードを食べることに飽きてしまう犬もいます。愛犬にその傾向があるなら腎臓病用フードを数種類用意して、毎食ローテーションしながら食べさせるのも1つの手です。フードによって味が変わるため、1つの味に飽きやすい愛犬には有効な方法になるでしょう。
腎臓病の犬に関するよくあるQ&A
飼い主さんが悩んだり不安に思うポイントをまとめました。腎臓病の愛犬との暮らしにお役立てください。
腎臓病の犬におやつを与えても大丈夫?
A.腎臓に負担のないものであれば、あげても大丈夫
愛犬の体への負担を考えると腎臓病用フードと水のみが理想なのですが、それでは愛犬のQOLが下がってしまうと心配になってしまうかもしれません。腎臓病と上手に長く付き合っていくために、おやつは適切な原材料、成分と量を守れば与えても大丈夫です。
腎臓病の愛犬にあげるおやつは、低タンパク、低リン、低ナトリウムのものを選びましょう。パッケージに「腎ケア」「低タンパク・低リン・低ナトリウム」と書いてあるものだと、より安心です。いくら腎臓にやさしいおやつだとしても、あげすぎは禁物。おやつの量は、1日の摂取カロリーの10%以内に収まるようにしましょう。
市販のおやつではなく手作りする場合は、リンを多く含むチーズや肉・魚は避けて、低リンの食材を選びます。具体的には、白米・イモ類・野菜・果物など。ただし、ホウレンソウはあげないようにしてください。ホウレンソウに含まれるシュウ酸は腎臓病を悪化させることがわかっています。
腎臓病になる前に買って、残っている普通のフードを食べさせても大丈夫?
A.食べさせないようにしましょう
ここまでにお伝えしてきたように、腎臓病になると健康な犬のフードや食事が腎臓の負担になってしまい、病気が悪化してしまいます。その悪化を遅らせるために、低タンパク・低リン・低ナトリウムの療法食をずっと食べ続けないといけません。
せっかく買ったフードを食べさせたい気持ちはわかりますが、愛犬の体のことを考えて、食べさせない決断をしましょう。
手作りで療法食をつくってあげたい!何に気を付けたらいい?
A.手作りごはんはおすすめしない、どうしても作るなら獣医師に相談を
腎臓病になると食べていいものも限られ、食欲も低下してきます。手作りごはんを作ってあげたいと思うのが親心でしょう。でも、腎臓病の食事管理はとても大変。食材1つひとつの栄養素や成分を熟知して、料理した後の成分の値を測定する必要もあります。しっかり栄養管理しないと大切な愛犬の腎臓に大きな負担をかけることになり、腎臓病が悪化してしまうからです。
どの成分をどの値まで制限するかについては、きちんと検査をしたうえで筋肉量や体調、腎臓病のステージなど総合的に判断して細かく決める必要があります。それに基づいて栄養管理するのはかなり難しいことです。すべて手作りでごはんを用意するより、腎臓病用フードに手作りトッピングはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、腎臓病の愛犬におすすめのドッグフードを3種類に厳選して紹介しました。
良い腎臓病用フードの選び方
- 低タンパク質・低リン・低ナトリウム
- タンパク質に代わる良質なエネルギー源が入っていること
- 良い評価、具体的な口コミが多いこと
慢性腎臓病は愛犬が一生付き合っていかなければならない病気です。今回ご紹介したフードを参考に、愛犬がQOLを維持して長生きできるようフードを選んであげてくださいね。